旅に寄り添わせて

半年間以上忙殺された時期があったので、すっかり本を読む習慣が失われてしまった。
思い返してみると、月に1冊以下のペース・・・まぁ、ひどい忙殺だった割には・・・という感じかもしれない。
最近は読むとすると、仕事終わった後にホッとコーヒーを飲んでいるときとか、少し長めの移動時間があったとき。すなわち偶発的に開ける空き時間、だけになってしまった。
そういう訳で、どうせ読めないのならと半無意識的に本屋へ立ち寄る頻度を落としている自分に気づく。


1冊読みたいと思って買った本があったのだけれど、稀なる長期旅行の機会があったので、その旅行に関連した本を買ってみることにした。
そのお国柄の文学を読んでみようと、グーグル先生に聞いてみると・・・こちらのページを参考にしてみた。
http://homepage3.nifty.com/prof_m/ch/books/0003fiction.htm
門外漢にはこういう形式がとてもありがたい。
と、このページをメモして丸善へ向かい、探してみる。
ない。
ないない。
ないないない。
在庫がないのですよ。
リストの本をいくつか検索してみると、在庫なしばかり。そうか、考えてみるとそうだよなぁ。いつもどんな本でも置いてある訳がない。しかも、国柄の文学ともなるとマイナーになりがちだろう。


そこで、リストにある作者をキーに書店棚を探してみたところ・・・良さそうな本が見つかった。

アルプスの谷 アルプスの村 (新潮文庫)

アルプスの谷 アルプスの村 (新潮文庫)

山を題材にした小説で有名な著者の、アルプス紀行です。*1
冒頭に簡単な地図がついてて、旅行の工程が記されていて親切。


自分の旅行中、機内車内の暇なときに読もうかと思っていたのですが・・・機内は寝てしまったり、映画を思わず見てしまったりしたし、現地車内では幸運にも好天気に恵まれ、アルプスの山々がずっと美しく見えていたので、本など読む間はなかったのでした。
結局読み終えたのは、帰国後半月以上経ってからです。


本当に、何も知らずに旅行をしていたので、こちらの本を読んで漸く知った事実がいくつも。少しだけ書いてみますと・・・
▽現地で見た川が、やたらと青白く濁っていたのは、アルプスの氷河から溶け出した水だから。氷河は水と岩石が凝り固まっているので、岩石が混じっていると白い。途中、河(ライン川?)の合流地点で、青白い河と茶色っぽい河が合流しているところがあり、目を奪われた。
▽現地ではどこの町に入っても、必ず美しい格好の教会が建っていた。一つの部落は教会を中心にして作られているため。また、お金を出し合って建てているので、出し合っている分立派な教会ができる。
▽同じアルプスといいながら、スイス側で見るのとフランス側で見るのとではだいぶ違ったものを感じるらしい。
▽(今は知らないけれど当時)日本の山岳会は戦国時代を続けているらしい。
セガンティーニの絵を見ると、あまりに暗いのに驚いたそうな。その絵はそのまま、当時の暗い山村のスイスを表現したものらしい。現在の明るいスイスは、スイス人のたゆまぬ努力のたまものから出来上がったもので、いってみると人工的といっていい程美しく出来上がっている。
確かに現地での移動で、数時間バス・電車で移動する機会が度々あったけれども・・・ときどきうたた寝をしてひょっこり目を覚ますと、麓の集落は、常に、きれいな牧草地・明るい花々がベランダに飾られた家々が並んでいた。正直、異常なまでにとも感じた。観光していると時折、花の手入れをしている方を見かけたけれど、そういう方々のたゆまぬ努力があってのこそだろう。
しかし、それでもどこの民家のベランダにもきれいな花の植木が飾られているのにはかなり驚愕した。枯れている花が飾られていることはなかったように思う。


そういう訳で、たまたま旅行中ずっと好天気に恵まれたこともあって、「観光」としてはとてもすばらしい眺望ばかりを見てきました。
この本の紀行文にあるような、もっと生の現地に触れることがあっても良かったかもしれないけれど、それはそれで良かったのかもしれないなぁ。一般人としては。


・・・でも、山題材の本は、もう、あまり読まないかもしれない・・・。

*1:勿論、門外漢の私は何も知らなかった訳ですが。