突飛的に読むのかはたまた続けて読むのか・・・
今までのところ読んでいる本は、普通の小説・時事問題ネタ・物理メインの科学ものとかそんなようなもので、個人的にはなるべく偏らないようにしていたつもりなのですが・・・。
そういえば、医療的な本って読んだことがないなぁとふと思いまして。
どうせなら、学際的に研究もなされている病気ということで、癌の本を読んでみることにしました。
しかしよくよく考えてみると、癌って何だろうかと。全然無知です。
細胞が異常に分裂しまくってて、レントゲンにも写る・・・程度しかぱっと浮かばない。
治療法も、確実なものが確立されてないせいなのか、胡散臭そうなタイトルの本を色々と見たことがあったような。
てことで、とりあえず癌っていうのがどんな病気で、今までにどんな研究がなされてきたのか、という「科学的事実」を知るため、こちらを読んで見ました。*1
がんはなぜ生じるか―原因と発生のメカニズムを探る (ブルーバックス)
- 作者: 永田親義
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/12/21
- メディア: 新書
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で、読んでみた結果・・・。
歴史的な事実から書かれていて初心者に読みやすく、解説に変な偏りがない良い本だと思いました。
ベンツピレンすら知らなかったなぁ。
てことで、なるほどーな箇所アゲ。
・日光はガンの原因になる。ガンになる身体部位(露出箇所かどうか)、緯度による日射量の差から生じるガンの発生しやすさ、動物実験などから裏付けられた。
・ウイルス性のガンもある。ただし、動物にガンを作るウイルスが多く発見されているのに、ヒトにガンを作るウイルスは非常に限られているらしい。
・タバコとアスベストは、発がん性に非常に強い相乗効果を持つ。
・アスベストの発がん性は活性酸素による説がいくつかあるが、まだ仮設。
・疫学的研究から、ヒトのガンの30%はタバコが原因であると分かるが、タバコの中の何がガンの原因かはまだ良く分かっていないらしい。ベンツピレンが疑われているが、実は人間に高濃度ベンツピレンを塗布する非人道的実験が行われ、悪性腫瘍・ガンができなかった。
・発ガン二段階説というものがある。細胞ガン化と、ガンの進行促進の別の二段階で発ガンするという説。
・細菌病にはコッホの三原則というものがある。分離された病原体を試験管内で培養できること。培養された病原体を動物やヒトに戻すと元の病気を再発すること。引き起こされた病気から病原体が分離されること*2
・食物や栄養とガンの関係は、きわめて複雑。ある食物が一部のガンを増やす方向に作用する一方で、他のガンに対しては減らす方向に作用する、二面性がある。例えば、脂肪は大腸がんを増やす方向に働くのに、胃がんは減らす方向に働く。米食はその逆。
・DNAからのたんぱく質生成メカニズム。DNA中3個の塩基が1つのたんぱく質に対応し、この情報が核内でm−RNA*3に転写される。*4m−RNAは核外に運ばれ、t−RNA*5が運んできたアミノ酸をつなぐ情報源となる。こうして、アミノ酸がつながれ、たんぱく質が生成される。
・上記システムの内、ガンの発現メカニズム研究には大きな2つの流れがある。1つはDNAの構造そのものが突然変異で変わった結果ガンがあわられるというもの。もう1つは、m−RNA情報からアミノ酸がつながれる際、そのつながれ方・たんぱく質の生成のされ方に異変が起こるというもの。*6最有力説は勿論良く知られるように突然変異であるが、反する実験事実も数多くある。
・最も新しい説は、ガン化細胞は幹細胞、各種臓器へ未分化の細胞であるという説。この説なら、がん細胞の性質の不均一さが説明されるらしい。
・・・多いなぁ〜。大変勉強になりました。
中でも、時代時代で主流だった考え方が一気に廃れた考え方になるあたり、本当に良く分かってない部分ばかりなのだな、ということを感じさせられます。こうなると、「理論屋」が本質を解き明かそうとする一方、「臨床屋」*7が実経験的な対応方法を有力な考え方に基づいて行っている、という実情なのかなぁ。
良く分かっていない分野でかつ、生命・健康に関わる話なので、藁にもすがりたいお気持ちの患者さんを惑わすように、いろんなことを言う本もたくさん出ていて、儲かると。
胡散臭い言説でも、後で何とでも言いようがあるという。パソコンのような電磁機器に長時間向かうと、テンペスト効果で悪性幹細胞が刺激され、死滅するとか・・・ちょっと考えてみた!!
冗談はともかく。
もう少し何冊か読んでみて、現状の均等な知識を学んでおくのもいいかもしれないなぁ。