警報電子音

研究室のある建物は、土日になると、大抵全ての出入り口が閉じられる。
閉じられない場合もあるのだが、それは建築士の試験で建物が使われる、といったような特別な場合である。(こういう日は、実は結構多い)


出入り口が閉じている場合、長嶋さんのSECOMマークのついている、裏口から入ることになる。ただし、この裏口はカードキーで鍵が解除される設備があり、面倒ではあるがセキュリティは比較的しっかりしているのだろう。そしておそらく、開錠の状態は、正門の守衛室で管理されているのだと予想する。


さて、この裏口の扉なのだが、開けるのはそういう意味で少々面倒なのではあるが・・・さらに非常に閉じが悪い。重みとしてはかなり重めの部類に入る扉だと思うし、例の「扉がきちんと閉じる機構」(名前は知らないけれども)も取り付けられてはいる。それにもかかわらず、いったん開けてそのまま放置すると・・・「ガチャコン」としっかり閉まらない。
しっかり閉めないままだと何が起こるか。そう。警報が鳴るのである。
この警報、よくあるあの「ピーーーー」と連続的に鳴り続けるカン高い電子音なのだが、非常に貫通力が強く、減衰が小さい。
結果、2階の奥側の部屋にいるにもかかわらず、非常に耳障りに聞こえ続け、不快な思いをすることになる。


警報が鳴るのを避けるためにはどうすればいいか。
至極簡単な話で、「最後までしっかり閉じればよい」のであり、建物に入る人がきちんとそれを心がければよいだけである。
しかしこの建物、一般教養講座の建物と同じものであるだけに、人の出入りが激しい。そして出入りするのは、その警報音の存在すら知るかどうかも分からない学生の連中である。一応、「警報が鳴るのでしっかり閉めろ」という旨の張り紙はしてあるが、今時の若者である彼らはそれを標語程度にしか受け止めていないのだろう。「たばこのポイ捨てはやめましょう」と同水準の重要度としか受け止めていない。困ったものである。

過去に一度だけ、事務かどこかからやってきた人たちが、このしっかりしまらない扉の対策を立てたことがあった。「最後まで閉まるようにする機構」の設備をもう一つ取りつけたのである。
取り付けた当初は、比較的効果があったような気もするが・・・今となっては無駄骨もいい所。というか、今現在はそれが取り外されてしまっていたような気もするが・・・後で見てこよう。
それ以降、事務方もあきらめたのか、対策を立てている気配は、ない。


半開きになっている扉を閉めに行くのは結局、毎回それをうるさいと思っている、建物内に研究室を持っている人間たちである。中には泊り込みで研究している人もいるだろう。
誰かが閉めに行く際は、実はその予兆がはっきり分かる。鳴っている電子音のボリュームが、わずかに大小するのである。これも、電子音の特性なのだろう。音源との間に障害物が入ると、その分はっきりと音の減衰が分かる。
このボリュームの変化があった後は、大抵「ガッチャン!」と怒り交じりに扉を閉める音がする。


自分の場合、この警報音が鳴り出したらどうするかと言うと・・・首を回して、耳の方向をわずかに傾けてみる。
なぜかというと・・・聞こえる電子音が、かなり小さくなるポイントがあるのである。これもどうやら電子音の特性のようで、おそらく音波の縦波に非常に指向性があるからだろう。
ある方向ではほとんど音波の振動がなくなり、耳鳴りより小さいくらいである。そうすれば勿論、不快度もほとんどない。
ただ、少し頭に、何かよく分からない聞こえない何かが響いているような違和感が残るけれども。


ぶっちゃけ、閉めにに行くのがめんどくさいからこういうしょうもないテクが身についてしまった訳だが。
さっさと警報音何とかしてくれよ、事務かどっか。


現在もまた、警報音は鳴り響き続ける。