漫然と読み終え

本日読み終えたのはこちら。

グアムと日本人―戦争を埋立てた楽園 (岩波新書)

グアムと日本人―戦争を埋立てた楽園 (岩波新書)

今年の夏休養に出かけたグアムについて、しばしば語られる第二次世界大戦の歴史と、現状の「楽園」としてグアムとの間に乖離が存在することをふと疑問に思いました。一体どのような変化を経て今の「グアム」が作られたのか?
そんな中、丸善をぶらついていたとき出会った本です。
以下、間違ってるかもしれない概要。


終戦し「戦後」の歴史が進行する中、まだ戦争は続いていたのかと記憶を呼び覚ませる象徴として語られる横井さん。
この1972年には既に多数の新婚さんが、新婚旅行の名目でグアムを訪れる時代になっている。
さらに、横井さん自身も帰国後まもなく結婚し、グアムへ「新婚旅行」している。


結局、現状の「楽園としてのグアム」を作ったのは、メディアの力らしい。
兼高かおる世界の旅、ザ・ガードマン、若大将、皇室の新婚旅行。このような60〜70年代のメディア情報を経て、日本人はグアム現場から遠くはなれた場所で、身近になったメディアから、「新しいグアムの記憶」を作っていった。
一方、グアム自身も観光を盛り上げるため、先輩のハワイを目指して開発を進め、ジャンボジェットの増便を契機にホテルが乱立していった。
事実、日本人が観光として主に訪れるタモン湾付近のみが建築やインフラ的にも豊かであり、上記「記憶」が実現されたモノとして申し分ない地域となっている。どうも、それ以外、軍事施設以外の場所は、恐ろしくインフラが脆弱なのだそうだ。


さて。
http://d.hatena.ne.jp/shun_t/20070830にグアムを訪れたことを書いたわけですが、この本から思い当たることが結構色々。
・ザクッと足を切ったのは、グアムの浜辺はさんご礁がかなり陸近くまで迫っているからだそうな。元々ワイキキのような仕様ではない。
・現地住民でさえ、水着のみで浜辺で身体を焼くようなことはしない。
・2002年の大型台風で壊れた博物館内の展示物が、マイクロネシア・モール内で間借りして展示されていたらしい。あんなバリバリの商業施設内に、そんなマジメな展示物があるとは夢にも思いませんよ・・・。それに、戦時の遺物が収められている博物館へ行くのに「ショッピング気分で」は行けんよなぁ。
・日本以外でのグアム・ガイドブックには、日本と米国間の戦いに関することがしっかり記述されており、日本国内のガイドグックとはかなり内容が違うらしい。
・グアムは未編入領土で、事実上アメリカの植民地らしい。


こうしてみると、先日の旅行ではものすごく「日本人」として踊らされていた訳ですな。
メディアの「記憶再開発」とは、歴史の記憶をも塗りつぶすパワーがあるようです。